振り返ってみると感動的な旅だった。
新日本海フェリー
出発当日の午後、装備の再点検。
舞鶴港、新日本海フェリー発着ターミナルへ。
_天候曇り。自宅20:30分頃出発。
_気温0°~2°ヘルメットのシールドが曇り、道路に敷設された道路鋲の点滅が幾重にもみえる。フロントの荷物が重たいのかカーブでハンドルがとられる。追いついてくる車が怖い。スパイクタイヤを装着した走行なので無理はできない。途中、コンビニで駐車、店の明かりを頼りにフロントの荷物を整理する。以降ふらつきがなく快調な走り。23:10舞鶴港フェリー乗り場着。バイクは私ひとり、待つこともなく乗船となった。
新日本海フェリーで北海道小樽へ
_乗船後、スリッパと日本酒と酒の肴を買って船室へ。定刻0:30出航。20時間15分の船旅が始まる。冬の北海道、安全に楽しく走れるだろうか。不安がよぎる。1時半頃就寝。暖房がよく効いていて数時間後汗で目覚める。
_ドドーン、ドーンと船底を波が叩く。ひどい揺れ。日本酒を呑んで寝たので酔いを先取りしてしまったのか全く堪えず。それにしても大きな船が面白いほど揺れる。
新日本海フェリー舞鶴〜小樽航路「あかしあ」「はまなす」総トン数16810トン、全長224.5m、旅客定員746名、積載台数(トラック150台、乗用車66台)、航海出力30.5ノット 新日本海フェリーのホームページより

一時、陽光さす日本海
_10時 船長より船内放送「山形沖合200キロ航行中、速度28ノット(約50キロ)、天候は冬型気圧配置、曇&雪、北西の風25m、波の高さ3m、荒天のため小樽着は30分遅れの21時15分の予定です」13時の船内放送では45分遅れとなる。ずっと揺れっぱなし 。立っているとさすがに酔いそう。
_18:45船内レストランで夕食。北海道函館沖に入って携帯が通じるようになった。天気予報を調べると石狩地方大雪・風雪・雪崩警告発令中!、明日のR451走れるだろうか・・・
_情報を収集し明日の走行コースを再検討しておく必要があり、宿泊先をインターネットが可能な小樽のビジネスホテルに変更。閑散期のため空き部屋有り。小樽港到着予定21時25分
小樽
気温−8℃ 小雪。フェリーを降りたとたん雪にハンドルをとられ、危うく転倒しそうになる。両足をついて事なきを得る。ナビの目的地を宿泊先のホテルにセットしGO。道路の左右には積み上げられた雪の山。「すごいなぁ」・・・慎重に走る。生まれて始めての体験だ。
_バイクはホテルの屋根つき駐車場(200円)に置きチェックイン。部屋で荷物を再整理し二つのリュックを一つにまとめる。
本日の走行距離 2.8キロ 本日の転倒0回
2nd day 小樽~浜益~歌志内 166km
浜益へ
_スマホで天気情報等を収集するが好転の兆しなし。午前8時頃ホテルを出て小樽駅前の写真を撮り、雪の道路へ慎重に踏み出す。

JR小樽駅前通り
まずは朝食。ツーリングマップルで紹介されていた鱗友市場味さきに向かう。迷わず店を見つけ、狭い路地の先に駐車場が見えたので、その路地を強引に突っ込む。ところが見かけより雪深くスタック。前後に何回かバイクを動かし四苦八苦。もうダメかと諦めかけたとき、かろうじて脱出。大汗かいて入店。夫婦二人で経営してるようだ。メニューを見る、高い、出るわけにもいかず海鮮ご飯2100円也(この値段なら何処で食べても美味しいのでは?)
_食事を終え、小樽運河方面へ、しばらく走り橋を渡っ矢先、左から車が出てくる。軽くブレーキをかける。ガシャーン、1回目の転倒。運転手さんが「大丈夫ですか」とすぐに降りてきてくれたが、迷惑かけてもと思い、何も確かめず即座に「大丈夫です。バイク起こしてくれませんか」とお願いする。気を取り直しバイクに跨る。左のバックミラー早くも損傷。
それから、暫く走っていると何かを引きずるような音、後ろの車がクラクション。すぐ止まらなければと思うが、車も多く路面は雪の凸凹道。先ほどのこともあり、スピードが自然に落ちるのを待ちながら最小限のブレーキでフラフラと道路の端に停まる。荷台のひもが緩み荷物を引きずりながら走っていたようだ。あらためて締付け具合をチェックしR337へ。これから先大丈夫かな?・・・
_9:47IDEMITHU朝里で北海道一回目の給油。R337に入りると圧雪アイスバーン、車は多いが幾分走りやすい、まだ慣れていない。

R337にて
_R231に入り石狩市を縦断し浜益を目指す。石狩市八幡町を過ぎたあたりから望来にかけて猛吹雪に見舞われる。視界3.5メートルか?
_危険過ぎてバイクを目立ちやすい道路標識の側に停め、一時休戦。しかし、地元のダンプやトラック、乗用車は速度を落としながらも、赤いテールランプを白い闇に光らせながら消えてゆく。 強烈な吹雪で前が見えないのに何を目標に進んでるのだろうか?

吹雪で進めず
_この吹雪はいつまで続くのだろうか。近くにバス停があったので行ってみた。入り口まで雪に埋まりラッセルしないと入れない。もし吹雪が長引きそうなら、あのバス停にラッセルして避難と決め込む。寝袋も持参してきている。大丈夫だ、何とかなるだろう。

吹雪やまず 茶色い建物がバス停
小一時間ほどして、吹雪が少し弱まる。移動再開。

R231号 厚田村から日本海を望む
_止まっては進み、止まっては進みを繰り返し、R451の分岐点にあるENEOS浜益給油所で一息つく13:40。給油後、事務所に入らせてもらい自動販売機のコーヒーで生き返るホッ! 気付けば昼食抜きだった。

浜益GSにて

浜益交差点付近から見たR231号
歌志内市へ
_これから走る予定のR451(暑寒国道)の道路状況を給油所のひとに聞く。「今、除雪車が行ったところ、多分大丈夫だろう。ただ27キロ先迄だよ。それより先は他の町だから知らない」という答えだった。
_ここからは、R451で滝川市に向い、砂川市を経由し歌志内市うたしないチロルの湯に行く予定。そこでテント泊。もう14時、日暮れ迄に間に合うだろうか、急がねば。だがスピードは出せない!
_R451は車もほとんどなく、おまけに除雪車が通った後で平らな圧雪路。快調に真っ白い銀世界を走る。快調ですぞ~

除雪されて間もないR451
_道道26号分岐を超えたあたりの峠道から、雪深くハンドルをとられる。ラインを見極めゆっくり走る。

バイクのスクリーン越しにみる道路
_たまにくる車があれば止まってやり過ごす。何回目かの停車時、左により過ぎ、路肩の轍にハンドルをとられ、道路脇に小高く積まれた雪山に倒れる。45°ほどの転倒、左足でヨイショと雪山を蹴ってバイクを立てる。(転倒2回目)
_峠道がやっと終わり、R451から砂川市内を通過し道道627号へ向かう。既に16時を回ってる。日が暮れてしまうぞ。
大転倒
_R451から道道627号へ入る。車多し。できるだけ車の流れに合わせながら走る。ふと、ナビを見ると左へカーブの表示、前方を見て「えぇ、そんな道あるん」と思ったが、それらしき道が見えた。これか?とハンドルを左に。車速は40キロ強だったか?、スル~と前輪が滑りガチャーンと左に大転倒。(転倒3回目)
_バイクもろとも横倒しになった私の後ろに、除雪作業のダンプカーが止まる。運転手さんは手助けする様子もなく「はよどかんかい」と私を見つめているだけ。そしてそのダンプの後に車の渋滞が。バイクの下に足首が挟まって動けない。焦る、痛い。何とかバイクの下から足を引き抜きバイクを起こそうとするが、靴底が滑り力が入らない。バイクも滑ってゆく。腰もビビ。何と道路はツルツルに凍っているではないか。こんなところを走ってるのかと我ながら驚く。持参してきた軽アイゼンを早くつけておくべきだったと思ったが後の祭り。
_横倒しのバイクを道路の端へ引きずる。ダンプの運転手にどうぞと合図。とりあえずホッとする。ダンプカーはタイヤをスリップさせ、凍結した氷を削りながら私の前を通り過ぎた。
_とりあえず車が通れるようになったのでホッとしたが、横倒しになったバイクと私を見ても、車の運転手はみんな知らん顔。その理由も分からぬではないが、「助けたろう」と手を貸してくれる人がいても良さそうなものだ。数十分転けたバイクを眺めながら途方に暮れる・・・日も暮れる。
_一台のダンプが止まり、運転手さんが降りてきてくれた。「靴が滑ってどうにもならないんです」と助けを求める。「ここは、カチンカチンに凍ってるからなぁ」と言って手伝ってくれました。
_やっとバイクは起きたが、ハンドルを持って移動させようとするが、またまた氷上を滑ってどうにもならない。
運転手さんにバイクを支えてもらい、バイクに跨がってアクセルを回す。難なく移動完了。スパイク「ゲキ」効きじやんと驚く。運転手さんにお礼を言って、またまたホッ。もう辺りは暗くなっていた。
_バイクの左ステップがひん曲がっていた。昨日のバックミラーの損傷に加え、チェンジペダルのシフトダウンが効かなくなった。以降ツーリング終了までシフトアップのみ。
うたしないチロルの湯へ
_道道627号から道道114号へ。凍結したデコボコ道を慎重に進む。左足首を捻挫したようだ。チェンジの度に痛む。途中のセイコマで弁当とビールとアテを買い、やっとのことでうたしないチロルの湯に到着。
_真っ先に温泉に入り捻挫した足と疲れた腰をじっくり温める。テントに戻って、真っ暗闇の寒い中で湯を沸かし食事をする気力も喪失。チロルの湯の館内にあったレストランで、ビールと夕食。セイコマで買った弁当は明日食べよう・・・凍ってしまうかな?